死に様データベース
《誅殺》 《1349年》 《12月》 《21日》 《享年不明》
鎌倉将軍府関東廂番、
室町幕府引付頭人・内談方頭人。
伊豆守護。
足利尊氏・直義兄弟の従兄弟にして、
直義の近臣。
将軍足利尊氏とその弟直義の、
二頭政治によって成り立っていた、草創期の室町幕府であったが、
貞治5年(1349)頃より、
政権構想の違いなどに基づく、尊氏の執事高師直と直義の深刻な対立によって、
樹立早々、危機を迎えることとなる。
貞治5年(1349)閏6月15日、
直義派は尊氏に迫り、高師直の執事職を罷免させた。
これを主導したのは、
直義の近臣上杉重能と畠山直宗だったという。
しかし、
師直も負けてはおらず、
8月13日、
一族や自派の武士を集めて、直義を討とうとした。
危機を察した直義は、
兄尊氏の屋敷に逃避するが、
翌14日、
師直は、その屋敷を取り囲んで、
主人尊氏に迫った。
師直には、千葉氏胤や宇都宮氏綱をはじめ、「天下武士」が味方し、
対する尊氏邸の直義派は、その半分にも満たなかった。
師直が迫ったのは、
「讒臣」上杉重能・畠山直宗・僧妙吉の配流、
直義の政務停止、および尊氏の嫡子義詮との交代であった。
15日、
しかたなく、尊氏・直義は、これを飲んだ。
僧妙吉は、逐電してしまったため、
その住房を毀ち、
捕えられた上杉重能・畠山直宗は、
越前に配流されることとなった。
8月17日、
近江と越前の国堺、黒川周辺で、
重能が討たれて、梟首されたとの報が、
京都で流れた。
これは結局誤報であったが、
結局、重能・直宗ともに、
この年のうちに、配所で誅殺されてしまう。
8月とも、10月とも伝わる。
出し抜き、出し抜かれるは、
戦乱の世の常か。
以下、『太平記』の記述。
師直の命を受けた八木光勝が、一行を追いかけて、
越前足羽で取り囲むくだり。
ただつかれの鳥の、犬と鷹とに攻めらるらんも、
かくやと思いしられたり。
これまでも、主の専途を見果てんと、
付き従いたりける若党十三人、主の自害を勧めんため、
おし肌脱いで、一度に腹をぞ斬りたりける。
畠山大蔵少輔(直宗)、続いて腹を掻き斬る。
その刀を引き抜いて、
上杉伊豆守(重能)の前に投げやり、
「お腰の刀はちと寸延びて見え候、
これにて御自害候え」
と言うも果てず、
うつ伏しになりて倒れにけり。
伊豆守、その刀を手に取りながら、
幾程ならぬ浮世の名残を惜しみて、
女房の方を、つくづくと見て、
顔に袖を押し当て、たださめざめと泣きいたるばかりにて、
そぞろに時をぞ移されける。
さんぬるほどに、八木光勝が中間どもに生け捕られて、
刺し殺されけるこそうたてけれ。
武士たる人は、平生のふるまいはよしや、
ともかくもあれ、あながちに見るところに非ず。
ただ最期の死に様をこそ、執することなるに、
汚くも見え給いつる死に場かなと、爪弾きせぬ人もなかりけり。
なんとも人間くさい。
重能が、最期の未練に視線を送った女房は、
その後、往生院にて剃髪。
〔参考〕
『大日本史料 第六編之十二』 (1913)
鎌倉将軍府関東廂番、
室町幕府引付頭人・内談方頭人。
伊豆守護。
足利尊氏・直義兄弟の従兄弟にして、
直義の近臣。
将軍足利尊氏とその弟直義の、
二頭政治によって成り立っていた、草創期の室町幕府であったが、
貞治5年(1349)頃より、
政権構想の違いなどに基づく、尊氏の執事高師直と直義の深刻な対立によって、
樹立早々、危機を迎えることとなる。
貞治5年(1349)閏6月15日、
直義派は尊氏に迫り、高師直の執事職を罷免させた。
これを主導したのは、
直義の近臣上杉重能と畠山直宗だったという。
しかし、
師直も負けてはおらず、
8月13日、
一族や自派の武士を集めて、直義を討とうとした。
危機を察した直義は、
兄尊氏の屋敷に逃避するが、
翌14日、
師直は、その屋敷を取り囲んで、
主人尊氏に迫った。
師直には、千葉氏胤や宇都宮氏綱をはじめ、「天下武士」が味方し、
対する尊氏邸の直義派は、その半分にも満たなかった。
師直が迫ったのは、
「讒臣」上杉重能・畠山直宗・僧妙吉の配流、
直義の政務停止、および尊氏の嫡子義詮との交代であった。
15日、
しかたなく、尊氏・直義は、これを飲んだ。
僧妙吉は、逐電してしまったため、
その住房を毀ち、
捕えられた上杉重能・畠山直宗は、
越前に配流されることとなった。
8月17日、
近江と越前の国堺、黒川周辺で、
重能が討たれて、梟首されたとの報が、
京都で流れた。
これは結局誤報であったが、
結局、重能・直宗ともに、
この年のうちに、配所で誅殺されてしまう。
8月とも、10月とも伝わる。
出し抜き、出し抜かれるは、
戦乱の世の常か。
以下、『太平記』の記述。
師直の命を受けた八木光勝が、一行を追いかけて、
越前足羽で取り囲むくだり。
ただつかれの鳥の、犬と鷹とに攻めらるらんも、
かくやと思いしられたり。
これまでも、主の専途を見果てんと、
付き従いたりける若党十三人、主の自害を勧めんため、
おし肌脱いで、一度に腹をぞ斬りたりける。
畠山大蔵少輔(直宗)、続いて腹を掻き斬る。
その刀を引き抜いて、
上杉伊豆守(重能)の前に投げやり、
「お腰の刀はちと寸延びて見え候、
これにて御自害候え」
と言うも果てず、
うつ伏しになりて倒れにけり。
伊豆守、その刀を手に取りながら、
幾程ならぬ浮世の名残を惜しみて、
女房の方を、つくづくと見て、
顔に袖を押し当て、たださめざめと泣きいたるばかりにて、
そぞろに時をぞ移されける。
さんぬるほどに、八木光勝が中間どもに生け捕られて、
刺し殺されけるこそうたてけれ。
武士たる人は、平生のふるまいはよしや、
ともかくもあれ、あながちに見るところに非ず。
ただ最期の死に様をこそ、執することなるに、
汚くも見え給いつる死に場かなと、爪弾きせぬ人もなかりけり。
なんとも人間くさい。
重能が、最期の未練に視線を送った女房は、
その後、往生院にて剃髪。
〔参考〕
『大日本史料 第六編之十二』 (1913)
PR
Comment
ブログ内検索
人名索引
死因
病死
:病気やその他体調の変化による死去。
戦死
:戦場での戦闘による落命。
誅殺
:処刑・暗殺等、戦場外での他殺。
自害
:切腹・入水等、戦場内外での自死全般。
事故死
:事故・災害等による不慮の死。
不詳
:謎の死。
:病気やその他体調の変化による死去。
戦死
:戦場での戦闘による落命。
誅殺
:処刑・暗殺等、戦場外での他殺。
自害
:切腹・入水等、戦場内外での自死全般。
事故死
:事故・災害等による不慮の死。
不詳
:謎の死。
没年 1350~1399
1350 | ||
1351 | 1352 | 1353 |
1355 | ||
1357 | ||
1363 | ||
1364 | 1365 | 1366 |
1367 | 1368 | |
1370 | ||
1371 | 1372 | |
1374 | ||
1378 | 1379 | |
1380 | ||
1381 | 1382 | 1383 |
没年 1400~1429
1400 | ||
1402 | 1403 | |
1405 | ||
1408 | ||
1412 | ||
1414 | 1415 | 1416 |
1417 | 1418 | 1419 |
1420 | ||
1421 | 1422 | 1423 |
1424 | 1425 | 1426 |
1427 | 1428 | 1429 |
没年 1430~1459
1430 | ||
1431 | 1432 | 1433 |
1434 | 1435 | 1436 |
1437 | 1439 | |
1441 | 1443 | |
1444 | 1446 | |
1447 | 1448 | 1449 |
1450 | ||
1453 | ||
1454 | 1455 | |
1459 |
没年 1460~1499
没日
1日 | 2日 | 3日 |
4日 | 5日 | 6日 |
7日 | 8日 | 9日 |
10日 | 11日 | 12日 |
13日 | 14日 | 15日 |
16日 | 17日 | 18日 |
19日 | 20日 | 21日 |
22日 | 23日 | 24日 |
25日 | 26日 | 27日 |
28日 | 29日 | 30日 |
某日 |
享年 ~40代
9歳 | ||
10歳 | ||
11歳 | ||
15歳 | ||
18歳 | 19歳 | |
20歳 | ||
22歳 | ||
24歳 | 25歳 | 26歳 |
27歳 | 28歳 | 29歳 |
30歳 | ||
31歳 | 32歳 | 33歳 |
34歳 | 35歳 | |
37歳 | 38歳 | 39歳 |
40歳 | ||
41歳 | 42歳 | 43歳 |
44歳 | 45歳 | 46歳 |
47歳 | 48歳 | 49歳 |
本サイトについて
本サイトは、日本中世史を専攻する東専房が、余暇として史料めくりの副産物を蓄積しているものです。
当初一般向けを意識していたため、参考文献欄に厳密さを書く部分がありますが、適宜修正中です。
内容に関するお問い合わせは、東専房宛もしくはコメントにお願いします。
当初一般向けを意識していたため、参考文献欄に厳密さを書く部分がありますが、適宜修正中です。
内容に関するお問い合わせは、東専房宛もしくはコメントにお願いします。
最新コメント
[10/20 世良 康雄]
[08/18 記主]
[09/05 記主]
[04/29 記主]
[03/07 記主]
[01/24 記主]
[03/18 記主]
[03/20 記主]
[07/19 記主]
[06/13 記主]
アクセス解析
忍者アナライズ
P R